テレワークとは? 導入の方法とメリット

政府が推奨する「働き方改革」の切り札として注目されている「テレワーク」。新型コロナウイルスの感染拡大防止のために導入する企業が急激に増えていますが、テレワークとはどのような働き方を指すのでしょうか。ここでは、多様な働き方を実現するテレワークについて、そのメリットや導入方法を詳しく解説していきます。

テレワークとは?

少子高齢化による労働力人口の減少や自然災害発生時の通勤問題など、働く人を取り巻くさまざまな問題の解決策として以前から注目されている「テレワーク」。「離れた・遠距離」を意味する「tele」と「働く・労働」を意味する「work」という二つの英語を組み合わせて作られた造語で、インターネット環境やパソコン、タブレット端末などを活用した、時間にも場所にも縛られない働き方のことを指します。

もともとは、交通量が急激に増えた1970年代のアメリカにおいて、道路の混雑や大気汚染問題を解決するために始まった働き方で、日本では2016年に政府が「働き方改革」を掲げたことで、少しずつ導入する企業が増えていました。そして2020年、新型コロナウイルスの拡大が世界中で深刻な問題となると、出社をせずに仕事を継続することができるテレワークは急激に注目を集めることとなったのです。

テレワークの種類

テレワークは勤務形態によって大きく、「在宅勤務」、「モバイルワーク」、「サテライトオフィス勤務」の3つの種類に分類されています。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

在宅勤務

在宅勤務というのは所属するオフィスへ出勤せずに、自宅を拠点として仕事を行う勤務形態のことを意味します。インターネットや通信デバイスなどが普及したことによって導入する企業が増えている働き方で、通勤負担が大幅に軽減されて時間を有効活用できることから、育児や介護をしなくてはいけない社員のワーク・ライフ・バランスの実現や、病気や障害などにより通勤が難しい社員のキャリア継続も可能です。尚、在宅勤務には、企業に所属している人だけでなく、自宅を拠点に仕事をしているフリーランスなども含まれます。

モバイルワーク

在宅勤務が自宅を拠点として仕事を行うのに対し、モバイルワークは移動中の新幹線の中やカフェ、顧客先など場所や時間に縛られない働き方のことを指します。外回りが多い営業などの職種に向いていて、出先でも効率的に仕事を行うことで効率の良い働き方が可能です。モバイルワークを取り入れることで、オフィスに戻って仕事をする必要がなくなるため、移動にかかる無駄なコストを削減できるだけでなく、身体的な負担も減らすことができます。

サテライトオフィス勤務

サテライトオフィス勤務は、所属しているオフィス以外に、レンタルオフィスやコワーキングスペースなどのような遠隔勤務用の施設を拠点に仕事をする働き方のことです。サテライトオフィスには所属しているオフィスと同様に働けるように、通信環境などが整備されていることが特徴で、都市部の企業が地方の人材を活用することができるというメリットがあります。また、主要顧客の近くにサテライトオフィスを設けることで、素早く顧客対応することも可能です。

テレワークを導入する場合の企業側のメリット

テレワークを導入することで、企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

人材不足に歯止めをかけることができる

従来のオフィス勤務という働き方は、出産や育児、介護といったライフイベントの影響を受けやすいというデメリットがありました。本人に働きたいという意思があったとしても、働く環境が整っていないせいで辞めざるを得ないというのは、企業にとっても大きな損失です。テレワークを導入することによって場所に縛られない働き方が可能になれば、優秀な人材の流出を防ぐことができるというわけです。

オフィスに関するコスト削減

これまでのオフィスでは、社員一人ひとりにワークスペースを割り当てるのが一般的でしたが、テレワークを導入することで従来のオフィススペースを大幅に削減することができます。また、社員の通勤にかかっていた交通費も在宅勤務などを導入することで不要になるため、オフィスに関するさまざまなコストを削減することができるのです。

生産性の向上

テレワークを導入することで期待される大きな効果のひとつが、生産性の向上です。業務の種類によっては、在宅勤務のように周りに人のいない環境で仕事をする方が集中できるケースもあります。また、満員電車での通勤という毎日のストレスがなくなることで、精神的にも肉体的にもゆとりが生まれ、仕事に全力をそそぐことができます。オフィスで仕事をすることで生じるさまざまな無駄を省くことができるため、結果的に生産性の向上が期待できるというわけです。

ブランディング効果がある

テレワークを導入することは社員にとっても大きなメリットがあるため、対外的には「多様な働き方を認める先進的な会社」というイメージを打ち出すことができます。こうした企業イメージの向上は、取引先にも良い印象を持ってもらえるだけでなく、採用活動でも優秀な人材の応募を獲得するチャンスとなるのです。

リスクを分散することができる

台風や地震といった大規模な自然災害が多発する日本では、その度に従業員が出社できないという問題が取り上げられていました。テレワークを導入しリスクを分散しておくことで、自然災害発生時や感染症などのパンデミックが発生した際も、企業はその影響を最小限に食い止めることができます。緊急事態にも事業が継続できるということは、企業にとって大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

テレワークを導入する場合の雇用者側のメリット

テレワークは導入する企業側にメリットがあるだけでなく、働く人にとっても嬉しいポイントがあります。ここでは、雇用者側のメリットについて、詳しく見ていきましょう。

通勤にかかる負担軽減

毎日決められた時間に出社しなくてはいけない従来のオフィス勤務では、交通渋滞や満員電車などが社員にとっての大きな負担となっていました。テレワークを導入することでオフィスに出勤する必要がなくなれば、通勤による精神的または身体的な負担を大きく軽減することができます。また、通勤にかかっていた時間も削減することができるため、結果として生産性の向上にもつながるというわけです。

ワーク・ライフ・バランスの実現

場所や時間に縛られない働き方は、ワーク・ライフ・バランスが実現できるというメリットがあります。例えは、小さな子どものいる家庭では待機児童の問題もあり、思うような時期に仕事に復帰できないケースも珍しくありません。

また、子育て中は子どもの体調不良などで突発的に仕事を休まなくてはいけないことがあったり、自分の親に介護が必要になった場合には今後のキャリアを諦めなければならない場合もあります。テレワークを導入することで在宅勤務が可能になれば、ライフイベントの影響を最小限に抑え、仕事とプライベートを両立しながら働き続けることができるのです。

ストレスの軽減

従来のオフィス勤務では、毎日の通勤に関するストレスや、人間関係のストレスのせいで精神的にも肉体的にも負担となってしまうケースがありました。テレワークを導入することで、こうしたストレスを大きく軽減し、社員が心身に余裕をもって仕事に取り組むことができるようになるというメリットがあります。

テレワークを導入する際の企業側の課題・懸念点

テレワークの導入は、企業側にとって人材確保やコスト削減など多くのメリットがありますが、導入するにあたっては注意すべき点もあります。ここではテレワークを導入する際の課題や懸念点を詳しくみていきましょう。

労務管理がしにくい

テレワークを導入して在宅勤務やモバイルワークが増えると、社員がどのように働いているのかを把握しにくくなるというデメリットがあります。真面目に仕事を取り組む人、サボったり適当な報告をしたりする人が見極めにくくなってしまうことは、評価や給与計算にも関わるため大きな懸念点といえるでしょう。

コミュニケーション不足

テレワークの導入は、出社の負担を軽減してくれる一方で、社員同士のコミュニケーションが不足しやすいという点が課題となるケースもあります。コミュケーション不足はチーム力の低下や仕事のモチベーション低下にもつながり、結果的には生産性を低下させてしまうこともあるのです。

コミュニケーション不足を解消する方法はこちら

セキュリティに対する懸念

テレワークによって社員がさまざまな場所で仕事をするようになると、顧客情報や機密情報といった企業にとって重要な情報が外部に漏洩してしまうリスクが高くなります。また、出先で無料のWi-Fiなどに接続することでウイルスに感染してしまったり、ノートパソコンなどの端末を紛失してしまったりというリスクもゼロではありません。

テレワークを導入する際の雇用者側の課題・懸念点

一方、テレワークの導入は働く人にとっても気をつけなくてはいけない点があります。雇用者側の主な課題や懸念点について詳しく見ていきましょう。

働きすぎてしまう

テレワークを導入する際には、社員は自己管理の難しさを理解しておくことが大切です。例えば在宅勤務などのように一緒に働く人がいない環境の場合、成果を出そうとするあまり、働きすぎてしまうという危険性もあります。反対に、自宅を拠点に仕事をしていると誘惑も多く、オンとオフの切り替えをしっかり意識しながら働く姿勢が求められるのです。

できる仕事が限られている

テレワークは会社側にとっても働く側にとっても多くのメリットがありますが、残念ながら全ての職種がテレワークという働き方ができるというわけではありません。インターネットを使った仕事、パソコンやタブレットなどを使った業務以外はテレワークを有効活用できないのです。

テレワークの導入方法

では、実際に企業でテレワークを導入する場合、どのようにして準備を進めていけば良いのでしょうか。テレワーク導入のポイントを詳しく見ていきましょう。

現在の労務管理制度の見直し

テレワークを導入する際の大きな課題のひとつが、労務管理です。社員一人ひとりの働きぶりを適正に管理・評価できるように、テレワーク導入時には制度そのものの見直しをする必要があります。厚生労働省のガイドラインなどを参考にして、テレワークに合った制度を組み立てていきましょう。

社内のルールや制度の整備

評価方法、労働時間に対する考え方、顧客情報などをはじめとする機密情報の扱い方、端末の扱い方、セキュリティに対する考え方など、テレワークを導入する際には社内でルールや制度を整備し、全ての社員が共通理解していることが大切です。

参考:テレワークを導入するときに注意! 社内ルールの作り方

セキュリティ関連のシステム整備

テレワーク導入後に重要な情報を扱う場合には、セキュリティ関連のシステムをきちんと整備しておくことが大切です。特に自宅や出先などオフィス以外でインターネットに接続する場合には、サイバー攻撃やウイルス感染への対策は欠かせません。社員一人ひとりのセキュリティ意識を高めるための教育なども実施しましょう。

情報通信システムなどの環境の整備

テレワークを導入する際には、オフィスで仕事をしているときと同じように情報にアクセスでき、社内のシステムが使えるようにしている必要があります。そのためには、情報通信システム環境の整備を事前にきちんと行っておくことが大切です。

働き方改革や感染症予防など、さまざまな要因でそのニーズが増しているテレワーク。導入する際には、上記でご紹介した内容を参考にして準備を進めていきましょう。

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