ビジネスチャットツールの上手な使い方とは? Chatwork株式会社にインタビュー

リモートワークを導入する企業が増えている中、注目を集めているのが「ビジネスチャット」と呼ばれるツール。SNSと同じような気軽さで迅速に意思疎通ができるチャットツールが、ビジネスの世界でも浸透しつつあります。

そこで今回は、ビジネスチャットツールの老舗である「Chatwork」を運営するChatwork株式会社に、チャットツールをビジネスで使うメリットや上手な使い方をお聞きしました。

藤井香苗さんのプロフィール:大手外資系製薬会社に営業担当として新卒で入社し、1年目にして全営業社員の上位 10%の営業成績を記録。2016年にChatwork株式会社へ入社。現在は、カスタマーサクセスチームに所属し、Chatworkを活用した業務効率化や業績向上の支援などを担う。

チャットツールを使うメリットとは

―最近はチャットツールをビジネスで使う場面も増えてきましたが、ずばり、チャットツールを使うメリットについて、まずは教えていただけますか。

藤井さん:今プライベートでメールを使っている方は少数だと思います。それはLINEのようなチャット上のコミュニケーションが便利だからですよね? それを受けて今、ビジネスチャットがコミュニケーションを加速させるツールとして注目されているのだと思います。

よく比べられる、電話やメール、LINEなど他のコミュニケーションツールとの違いですが、電話は、言葉で伝えられる一方、言った言わない問題になりがちです。

メールは、「お世話になっております」という挨拶をはじめ、やり取りが仰々しくなりますし、SNSは気軽にやり取りできる反面、情報漏洩や乗っ取りのリスクがあります。でもビジネスチャットなら、LINEのような気軽なやり取りがメールや電話と違って時間を気にせずでき、ビジネス用に開発されたものなのでアカウントも会社で管理でき、乗っ取りの恐れもなくセキュリティ面でも優れている。これが大きなメリットだと考えています。

そしてビジネスチャットなら、テキスト上で誰がどんなやり取りをしているのか一元化して管理できます。

―どんな仕事を進める時にチャットツールを使うと便利なのでしょうか?

藤井さん:色々な使い方ができますが、確認すべきことが多い仕事、ヒアリングやすり合わせが必要な仕事に向いていると思います。

あとは、例えば部下のマネジメントなどにも。上長はグループチャット(編集者註:LINEのグループのようなもの。他サービスでは「チャンネル」など、呼び方は異なるが同様の機能が他のチャットツールにもある)に入っているだけで、部下のお客様への対応とか、誰がどんなタスクを持っているのかが分かります。

また、複数人で共有しながら進めていくような仕事では、社内のコミュニケーションツールとしてだけでなく、他社と共催セミナーをやる場合の企業間の連携、プロジェクト進行などにも便利で、実際に社外ともご利用いただいているユーザー様も多いです。

士業やコンサルタント会社など、社外の方と密にコミュニケーションを取らなければいけない職種とは特に親和性が高いようです。例えば、税理士のユーザー様は、お客様のケアにも使っているそうです。今までは何かトラブルや質問があったら、連絡をいただいてから会議室に集まって......という対応だったのが、チャットツールを使えば連絡をもらってすぐに回答ができたりするので、結果、お客様満足度が高まったそうです。

チャットツールの間違った使い方と正しい使い方

―チャットツールを使いはじめたばかりで使い方やルールがよく分からない、という声もよく聞くのですが、よくある間違った使い方などはありますか? その場合の正しい使い方も教えてください。

藤井さん:よくあるのは、メールと混同してしまうケースです。そしてチャットツールの最大の特徴である「グループチャット」を正しく使えないと、せっかくの便利さが半減してしまいます。

実際に、どんな使い方が間違っているのか、チャットツールの正しい使い方とともに例を挙げてみましょう。

間違った使い方と正しい使い方の例


【間違い】
「お世話になっております」の挨拶や文末に署名を入れるなど、メールのような堅苦しいやり取りをしてしまう。

【正しい】
「......!!」などポジティブなアクションや絵文字を使って、こちらの感情や温度感などをプラスして伝えながらコミュニケーションしていくほうが、やり取りが円滑に。


【間違い】
メールのように1つの文章に色んな情報を乗っけて、長文になってしまう。

【正しい】
1回の文面はなるべく細かく、やり取りはテンポ感を重視して。読みやすく改行しながら、相手の立場に立ってメッセージを送る。


【間違い】
グループチャットの数が少なく、1つのグループチャットに勤怠報告、タスク確認、案件Aなど話題が複数乱立。

【正しい】
勤怠報告はここ、案件Aはここ、など1トピック1グループを心がけ、グループは細かく分けて作成すると関連情報が集約・整理され、後日共有・確認する時にも見やすい。


【間違い】
部署ごとや内勤・営業で、メッセンジャーやLINEなど使っているツールがバラバラ。社内でツールが統一されていない。

【正しい】
使うツールは社内で統一し、始める時に「このツールはこのためのもの」と会社でルール化しておくとよい。報告はこのツールで、緊急の場合は電話で、など。


チャットツールの上手な使い方

―チャットツールを利用するにあたってどんなところに気をつけたら、もっと上手に使いこなせますか?

藤井さん:正しい使い方でも少しご紹介しましたが、チャットツールを活用する上で最も重要なのは「グループチャットの設計」です。

グループチャットは、いわば「クラウド上の会議室」。何でも1つのグループチャットでやり取りしてしまうと、議題が決まっていない会議のように議論の内容や経緯がわかりにくくなってしまいます。

まずは、会議のように目的ごとに細かく、1トピック1グループチャットを意識して、積極的にグループチャットを増やしていきましょう。

プロジェクト毎、案件毎、お客様毎にグループチャットを分ける

藤井さん:例えば、マーケティング部で使う場合には、マーケティング部のセミナー企画用チャット、マーケティング部の広告用チャット、などトピックごとに細かくグループ分けします。グループチャットが増えてきたら、社内、社外などのカテゴリーに分けて整理することもできます。

データベースとして活用できることを意識する

藤井さん:グループチャット内でやり取りすると情報がどんどんそこに溜まって、そのトピックに関する情報が集約されていきます。後から追加されたメンバーでもそれまでのやり取りを全て遡ることができるので、引継書を作らなくても経緯を共有できるというメリットがあります。グループチャットがデータベースになることを意識して使っていくと良いと思います。

―でも、そうするとグループチャットが増えすぎてしまい、チャットを追いきれないのでは?

藤井さん:大丈夫ですよ。チャットツールには、メッセージの重要度を見分けたり、細かく検索したりできる機能もあります。Chatworkを例に、チャットツールにある便利な機能を使いこなしていくためのコツをいくつかご紹介していきましょう。

「リアクション」機能を活用する

これはChatworkで簡単にポジティブなリアクションできるように昨年実装された「リアクション」機能です。今までは何かのアクションに対して「了解です」と書き込んでいましたが、それではタイムラインが「了解」だらけになってしまうので、確認したらリアクションボタンを押す、など各チャットツールにある便利な機能を活用してタイムラインに無駄をなくすと、後で見返した時にすっきりと見やすく便利です。

リアクション

チャットにToをつける

ChatworkではToで自分宛に来たチャットは背景が緑色になるので、もしミーティング中にチャットが20件入っても、Toが入っていれば自分宛のものが一目でわかります。メールだと新着順で埋もれてしまうこともありますが、チャットツールでは自分に関係あるものだけを抽出して見ることができます。

ソート機能で絞り込む

チャットツールでは、Toのついたチャット、タスクがあるチャットだけ、などソートをかけて検索することができます。この機能を使うと、自分宛のメッセージがあるグループチャットのみを表示することができ、便利です。

なるべく「こそあど言葉」を使わないようにする

「グループチャット名を検索しやすい名前にする」「メッセージを送信する際には「◯◯の件」にする」「なるべく具体的な言葉で発言するようにする」を心がけると、該当するチャットに辿り着きやすくなります。「これ」「それ」「あれ」「どれ」など、いわゆる「こそあど言葉」ばかり使ってしまうと、後から探しにくくなるのです。

ワードや発言者、発言日まで選ぶことができる、便利な検索機能はぜひ活用しましょう。

こんな使い方もしてみよう! 日報やタスク管理機能など

―チャットツールについて、実はチャットツールはこんな使い方もされています、という事例があれば教えてください。

藤井さん:それではChatworkを例に、「こんなことにもチャットツールは使えます」という事例をいくつかご紹介しましょう。

内定者のやり取りに使用

まだ会社のメールアドレスもない状態の内定者をフォローして、人事担当者が課題を出したり、回答してもらったり、といったやり取りに活用されているユーザー様がいて面白いなと思いました。これにより内定辞退者が激減したそうです。

大手企業だと内定者とのやり取りに専用のツールを導入しなければならないかも知れませんが、Chatworkなら無料のプランもありますし。内定した状態の時は無料のものを使ってもらい、実際に正社員になった暁にはアップグレードして会社の管理下に入れる、という使い方をしていただくこともできます。

全社アンケートにも活用できる

例えば、総務から全社員に「健康診断の予約をしてください」というタスクを送っておくと、

タスクが完了した人は完了ボタンを押すだけ、管理する側はタスク一覧だけで確認ができて非常に楽です。また、タスク完了の通知が多くなるとノイズになるので、設定でミュートにすることもできます。

電話の引き継ぎ専用に

「電話折り返しチャット」を作り、グループチャットにある「概要」(編集者註:Chatworkの右側に表示される概要。同様の機能でもチャットツールによって呼び名は異なる)に、受電で確認してほしいテンプレート(受電時間、会社名、名前、折り返しの電話番号、内容など)を記載しておくと、電話を受けた人がそれに沿って「◯◯さんからこういう電話がありましたので対応してください」とタスクを作成。タスクを受けた人はそれに対応する、という使い方ができます。

電話メモ

日報として使う

「日報チャット」を作成し、「概要」にテンプレートを作って、それに沿ってやり取りしていき、それを上長が管理して、という使い方で日報としても利用できます。

右下の部分に「タスクの一覧」も出てくるので、誰がいつまでに何をやらなければいけないのか、チェックもできます。タスクが漏れている社員がいないか見やすいですし、タスクが残っているかいないかで上長も部下のマネジメントがしやすくなるかと思います。

Chatworkに「既読」が存在しないわけ

―基本的なところなんですが、ビジネスチャットツールを開くタイミングとしてはいつがいいのでしょうか? 開きっぱなしだと通知が気になってしまいそうで......。

藤井さん:開くタイミングは、勤務時間帯は常時開いておくのがいいと思います。

PCを使う仕事の時間はチャットツールにログインしておく、さらに隙間時間で開けるようにスマートフォンにアプリをダウンロードしておくことをオススメします。

自分宛にメッセージが届くとスマートフォンに通知が届く時間帯を指定ができるので、平日の勤務時間帯だけにしておくと、送る方も気軽にメッセージが送れますし、勤務時間になればすぐに確認できます。

外回りの営業さんはスマートフォンだけ、内勤はPCだけ、という企業もありますが、PCからでもスマートフォンからでも、同じような使い勝手で、全社の共通ツールとして使えるというのがいいところだと思います。

そして、Chatworkには、既読機能がありません。

Chatworkはビジネス用途のコミュニケーションツールとして開発されたので、「既読スルー問題」でギスギスせずにポジティブなコミュニケーションが取れるように、Chatworkではあえて既読機能を付けなかったんです。自分のペースで効率よく活用していただけたらと思います。

―最後に、これからチャットツールの導入を検討されている企業様にアドバイスはありますか?

藤井さん:まずは小さく、進められそうな部署から始めていって、そこから徐々に範囲を広げていくといいと思います。いきなり全社に導入、ではなく。

コロナ禍によって弊社への問い合わせも急増しましたが、今後もリモートワークは推進されるでしょう。チャットツールが必要とされる場面も増えてくると思います。今後も、何かあった時のためのリスク管理として、リモートワークでも円滑に業務が進めやすいチャットツールの導入を検討いただくのが大切かなと思います。

チャットツールの上手な使い方(まとめ)

今回藤井さんにお聞きした「チャットツールの上手な使い方」をまとめてみました。下記のポイントを押さえ、上手にチャットツールを活用していきましょう。

・グループチャットはプロジェクト毎、案件毎、お客様毎に細かく設定

・メールと同じ使い方は厳禁!挨拶文など、堅苦しいやり取りはしない

・チャットは細かくリズミカルに。長文は避け、読みやすさを重視する

・タスク管理機能や概要欄、Toをつけるなど、機能をうまく活用してやり取りの能率を高める

・なるべく「こそあど言葉」を使わず、検索性を高めておく

・グループチャットのタイムラインはデータベースとして活用する

・Chatworkは既読機能をあえて付けていないので、「既読スルー」などでギスギスしない

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