リモートワークは急速に普及が進んでおり、通勤せずに仕事をするという働き方が当たり前の世の中になっていきそうです。しかしリモートワークを始めたての会社では、なかなかしっくりこなくて、出社した方が快適に働けると考える社員も多いかもしれません。それでは、リモートワークを快適にするにはどんな環境や行動が必要なのでしょう。
時代に先駆けいち早く「オフィスなし、全社員リモートワーク」を実践してきた株式会社ソニックガーデンに、リモートワークのメリットや、快適なリモートワーク術についてお聞きしました。
八角 嘉紘(ホスミ ヨシヒロ)さんのプロフィール:
ソニックガーデンの広報・マーケティング活動、新規事業・自社サービスの事業責任者として活躍。自由で快適な仕事空間でリモートワークを行う。
18都道府県にまたがる社員! 旅をしながら働く人も
―ソニックガーデンのスローガンは「いつ・どこで働いても良い」ですが、御社がリモートワークを取り入れたのはいつ頃ですか? また、実際にはどのような働き方をされている方が多いのでしょう。
八角さん:2011年の創業当初からリモートワークを開始し、徐々に移行して比率を増やしていって、2016年には実際のオフィスを撤廃。以降はオフィスなし、全社員がリモートワークで働いています。当社は「リモートでありながらチームで働く」を目標に、リモートでもオフィスと同じコミュニケーションができるようにしています。
現在、ソニックガーデンの社員数は45名ほどです。9割がプログラマーで、18都道府県にまたがって働いています。中には海外を旅しながら働いている人もいます。3ヶ月オーストラリアを旅しながらソニックガーデンの仕事をしていた人や、スノーボード好きが高じて東京から長野に引っ越してしまった人もいます。
腕のいいプログラマーは最先端の技術で最先端の仕事がしたいと思うものなのですが、東京にはやりたい仕事ができる職場がたくさんあるのに地方にはそれがなかったりする。でもソニックガーデンなら、そのミスマッチが解決できる。地方にいながらも東京の、最先端の仕事ができる、そこに魅力を感じ、門を叩いてくれる地方在住の人が多いです。
リモートワークを快適にする環境づくりとは
―ソニックガーデンに就職される方々は、在宅勤務の環境といいますか、働く場所をきちんと用意してから臨まれるんでしょうか?
八角さん:大体そうですね。まず、在宅勤務が前提の会社なので、コロナの影響が出る前から、8、9割が在宅勤務でした。残りの1、2割は、家族の問題・おうちの問題などで在宅勤務の環境が整っていない人で、その場合はコワーキングスペースや、会社が自宅の近くに小さな部屋を借り上げて提供する「ワークプレイス」を利用してもらっています。
仕事の環境に関わる出費は基本会社が支払ってくれます。プログラミングはデュアルモニター(モニターが2台ある状態)にすると生産性がすごく上がるので、ほぼ全員が購入しています。また、ずっと座りっぱなしになるので、椅子にも気を使っている人が多いですね。私も椅子はオフィスで使うような、腰にいい椅子を使っています。
―八角さんはずっとご自宅で勤務ですか? 外で仕事されることもありますか?
八角さん:自宅が主ですが、たまに外で仕事することもありますよ。近くの喫茶店とか。家では広いモニターで快適に作業できるから今日は家でやろう、今日は画面が2個なくても支障のない仕事だから気分転換に外でやろうと、仕事内容に応じて使い分けていますね。
リモートワークで快適に過ごす方法
―それでは、リモートワークでの快適な過ごし方についても教えてください。まず健康面について。リモートワークでは運動不足になりがちだと思いますが、特に気を使っていることはありますか?
八角さん:みんな健康面は気を使っていて、走っている人は多いですね。最近社内では、ランニング用のアプリを使って、ソニックガーデンのグループを作って競い合う、というのをよくやっています。私もそこに入って走っています。ひと月だいたい100kmぐらい、多い時は200kmぐらい。
当社の働き方は、いつ働いてもいい「フルフレックス」でもあるんですが、昼夜逆転している人はほとんどいません。チームで成果を出すような仕事が多いので、いくらフルフレックスでも他の人と働く時間を合わせないとコミュニケーションしにくくなってしまうのが皆分かっているので、基本的には朝9~10時ぐらいから働きはじめて、18時ごろに仕事を終える、という人が多いですね。私が走っているのは始業前の6時から7時の間ぐらいなんですが、たまに朝走れなかった時は、隙間時間にちょっと走りに行ってくると1時間抜けたりしています。
―リモートワークだと音も自由に出せますが、音楽やラジオ、テレビなどはかけて仕事していますか?
八角さん:BGMとしては、私は特に番組は気にせずラジオをかけることが多いです。好きな音楽をかけるとそちらに集中してしまう気がして。
あとこれは特殊ですが、「新幹線の動画と音を流して仕事をする」というのをやったこともあります(笑)。私の前職では出張が多く、新幹線は仕事に集中できたなというイメージがあったんです。YouTubeにある「東京から新大阪2時間半」みたいな車窓の動画をタブレットで流して横に置き、2時間半集中してやる。そうすると「もう名古屋か、あと1時間で京都か」という感覚が染みついているので、集中するのにいいんです(笑)。
リモートワークは他人の視線がない分ダラダラしがちなので、タイムトライアルじゃないですが、遊び心を持ちながら律する工夫も必要じゃないかな、と思っています。
リモートワークを快適にするグッズは?
―リモートワークをする上で、このグッズはあって良かったというものを教えてください。
八角さん:一つ目は、据え置き型のマイクですね。今まではヘッドセットを使ってイヤホンとマイクで喋っていたんですが、長時間使用していると耳が痛くなってしまうので、今は据え置き型のマイクにして、音は普通にパソコンから出すようにしたら長時間でも快適になりました。
もう一つはアプリですが「Krisp」。通話中のノイズをワンクリックでミュートする、優れたノイズキャンセリングのアプリケーションです。外のノイズが入らなくなるので、ラジオを流してもほとんど音を拾いません。
リモートワークでのコミュニケーションや時間管理のコツ
―コミュニケーションする上での快適さについてはどうでしょう。リモートワークは対面でのコミュニケーションが減った分、寂しさを感じたりしませんか?
八角さん:私たちに物理的なオフィスはありませんが、仮想空間上に作ったオフィスに入ることで「出社」し、オフィスで働くように仕事をしています。この仮想オフィス「Remotty」は、リモートワークをサポートするためにちょうどいいものを自分たち用に作ったもので、ちょっと他にはないツールだと思っています。既存のチャットツールを使ったリモートで寂しさを感じる人が多いのはよくわかります。私たちもその問題は経験しました。オフィスをどうデジタル上に再現するか、と考えた時に「顔が見える」「周囲の声が聞こえる」という2点がオフィスの大きな特徴だろうということで、それをデジタル上に再現しました。
Remottyでは、2分間に1回顔写真が撮られて、いるかいないかがすぐ分かるようになっています。お昼の時間には、顔写真が消えて(モノクロになって)ご飯マークがついてると、ああ今ご飯中なんだなと分かる感じです。皆のコメントが見られるようになっているので、14時に保育園のお迎えに行ってくるとか、今のうちに買い物行ってきた、とか、自由な雑談の様子が右側のタイムラインを流れていきます。Remottyではリモートワークの最大の問題である「気軽な雑談」ができ、皆の存在を感じながら仕事ができるので、リモートでもチームで働くことが可能です。
このRemottyを使い始めて「寂しい」問題もなくなりました。
―Web会議はよく実施されていますか?
八角さん:めちゃくちゃ頻度高く行っていますね。私ももう今日5、6回以上Web会議やっています。
リモートワークをどれだけ上手く使えているかの指標のひとつになると思っているのが、短いテレビ会議をどれだけ多く持てるか。多くやれている会社はリモートワーク慣れしている、生産性の高い会社だと思うんです。実際のオフィスでよくある、「ちょっといい?」という3~5分ぐらいの会話。これが大事で。リモートワークが上手じゃない会社ほど、何かをすり合わせるために1時間ミーティングをスケジュールに予定して......ということになりがちです。そうではなく、Web会議で「ちょっといい」的な5分ぐらいの会話をどれだけできるか、そういうことが浸透していると生産性が高まります。
―時間の使い方もリモートワークではかなり変わってきそうです。残業などは多いでしょうか?
八角さん:まず、当社ではRemottyに入っている時間がオフィスにいる時間、つまり労働時間として勤怠管理や給与計算に使われていまして、残業が発生したら残業代をお支払いする、という形です。でもソニックガーデンでは、ほとんど残業する人はいません。短い時間で成果をあげるのがカッコイイ、という感じなのであまり長く働いている人はいないかな、と思います。ソニックガーデンでは、例えば今月は160時間が所定労働時間だったとして、その人が100時間しかオフィス(Remotty)にいなかったとしても不問に処す(160時間分はお支払いする)、という形です。
―最後に、リモートワーク時代におすすめのソニックガーデンのサービスがあれば教えてください。
八角さん:先に紹介したRemottyという仮想オフィスのサービスは、我々にとってはなくてはならないものになっています。もともとは我々だけの仮想オフィスでしたが、今は誰でもご利用いただけるようにサービス化して提供しています。新型コロナの影響もあって、3月、4月は問い合わせが多く、色んな人に使っていただきました。Remottyのような、顔が見えて、気軽に話しかけられて、周囲の声が右側のタイムラインにずっと流れていて、みたいなものは世の中になかったものなので、すごく好評で、よく使っていただいています。
また関係会社がやっている「ラクロー」という勤怠管理ツールもあり、こちらもリモートワーク・在宅勤務に向いているということもあり、お問い合わせが増えています。ラクローはPCのログやメールの送信時間で勤怠管理をするツールで、出勤退勤など本人の「打刻」も特に必要ない。そういう管理の仕方です。
どんな風にリモートワークを進めていくのか、どんな形が自分たちにフィットするのか。
長年リモートワークを実践してきた我々には、リモートワークに関するたくさんのノウハウが蓄積しています。リモートワークが世の中に浸透することを願い、これらのノウハウを可能な限りオープンにしてお伝えしていきたいと思っています。お気軽にご相談ください。
快適なリモートワーク術(まとめ)
今回八角さんにお聞きした「快適なリモートワーク術」をまとめてみました。下記のポイントを押さえて、快適にリモートワークで働いていきましょう。
・ 自宅だけでなく、時には外に場を求めるのもあり。気分転換に喫茶店などで仕事をするのもオススメ。
・チームで働くなら働く時間帯はだいたい揃えること。
・デュアルモニターや腰にいい椅子など、働く環境は整える。
・ランニングやストレッチなど、意識的に運動をする。
・イヤホンが気になるなら据え置き型マイクにするなど、自分に合ったグッズを用意する。
・孤独を感じないよう、顔を見て働ける環境や、気軽な相談・雑談ができるようにする。
・ダラダラと仕事せず、セルフマネジメントできるように。楽しく律する方法を見つける。
・「ちょっといい?」的な使い方で、5分程度の短いWeb会議を頻度高く行う。
ソニックガーデンの社員が実際どんな環境で仕事しているのか?についてはこちらから:
長年リモートワークをしている社員が仕事環境にもつこだわりとは?新卒社員が突撃インタビュー