「仕事と生活の調和」を意味する「ワーク・ライフ・バランス」。仕事をする一人ひとりがやりがいや充実感を持って働くことができる豊かな社会を実現するための考え方で、その実現のためにさまざまな取り組みを始める企業も増えています。そこで今回は、働き方の新しい価値観であるワーク・ライフ・バランスについて、そのメリットや課題を詳しく解説していきます。
ワーク・ライフ・バランスが重要視される理由
まず、ワーク・ライフ・バランスが重要視されている主な理由について考えてみましょう。
少子高齢化による労働人口の減少
現在の日本は、少子高齢化による労働人口の減少が深刻な問題となっています。働き手が不足している企業では、その分を今いる社員でカバーしているのが現状です。長時間労働の常態化や労働環境の悪化によって、心身のバランスを崩したり、子育てとの両立が難しくなったりして離職する社員が増え、さらに人手不足が加速するという悪循環に陥っているケースも珍しくありません。
企業体質改善の必要性
社会問題となっている慢性的な人手不足を改善するためには、女性や高齢者の就業参加が不可欠だと言われています。ところが実際には、古い体質が根強く残っている企業も多く、女性や高齢者が働きやすい環境が整っているとはいえないのが現状です。
多様な働き方の模索
政府が目指す「一億総活躍社会」を実現するために欠かせないのが、「多様な働き方」の実現です。出産、子育て、介護といったライフイベントに影響されることなく仕事を続けられるような働き方を導入することが、結果的には労働力不足の解決にもつながっていきます。
ワーク・ライフ・バランスのメリット
ワーク・ライフ・バランスが実現することによって、企業はどのように変わっていくのでしょうか。ワーク・ライフ・バランスによって得られる主なメリットを見ていきましょう。
良い人材の確保
深刻な人手不足が問題となっている昨今、優秀な人材の確保は企業にとっての最重要課題のひとつです。ワーク・ライフ・バランスを大切にすることで、社員は出産や育児、介護といったライフイベントの影響を受けずに働き続けることができるため、優秀な人材の流出を防ぐことができます。また、そのような企業は「社員を大切にしている」というブランディングができるため、人材確保でも「選ばれる」企業になることができるのです。
従業員の仕事のモチベーションアップに繋がる
ワーク・ライフ・バランスを実現することができれば、従業員は仕事とプライベートの両立ができ、仕事に追われて家族との時間がなくなってしまったり、趣味や余暇を楽しむ余裕がなくなってしまったりということもありません。仕事以外の時間に余裕が生まれることで、個人のモチベーションが上がり、生産性の向上も期待できるというわけです。また、過労による心の病気や、ストレスなども軽減することにもつながります。
参考:業績アップに繋がる! 社員のモチベーションをアップさせる方法
企業体質の改善
ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、これまで日本に根付いていた「家庭や自分自身を犠牲にしても仕事を最優先する」という古い働き方の価値観を変える必要があるため、結果的には長時間労働の常態化や過労死など、日本の企業の問題となっていた部分の改善にもつながります。
政府から表彰される可能性も
ワーク・ライフ・バランスは政府が推奨する働き方で、「仕事と生活の調和」を大切にした取り組みを行なっている企業は、政府から表彰されるため、社員を大切にしている企業であるというイメージを世間に発信することができます。
ワーク・ライフ・バランスの課題と問題点
ワーク・ライフ・バランスの実現は企業にとっても大きなメリットがありますが、実際に取り組んでいく上では解決すべき課題があるのも事実です。ここでは、ワーク・ライフ・バランスの課題や問題点とその解決方法について詳しく見ていきましょう。
導入する際には少しずつ進めていく
ワーク・ライフ・バランスをスムーズに定着させるためには、時間をかけて環境を整えていくことが大切です。会社という組織にはさまざまな考え方や価値観を持った人が働いているため、新しい取り組みに対しての反応も異なります。職場内の混乱を抑えつつ、ワーク・ライフ・バランスに対する関心を持ってもらうためには、きちんと準備をした上で少しずつ始めていくようにしましょう。
経営陣の理解や承認が得られにくい
ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、企業の上層部や管理職がこれまでの働き方に対する価値観を変える必要があります。例えば、育児休暇制度や時短勤務制度などを新たに取り入れていこうとしても、経営陣の理解が得られなければ一般の社員は制度を気兼ねなく活用することはできません。
なぜ今ワーク・ライフ・バランスを実現することが大切なのか、企業側と社員の双方にとってどのようなメリットがあるのか、その重要性をきちんと理解してもらうことが大切でしょう。
導入後、制度が社員に定着しない
ワーク・ライフ・バランスの実現は、社員にとっても企業側にとってもメリットのあることですが、どんなに新しい取り組みを行ったとしても、社員がその制度の意味をきちんと理解していなければ、ワーク・ライフ・バランスを大切にするという意識が定着していきません。制度が一人歩きすることがないように、現場の声をしっかりと拾い、どのような制度が必要とされているかを正しく判断していくことも大切です。
新しい取り組みが定着するまでには、さまざまな問題や課題が出てくることもありますが、ワーク・ライフ・バランスの実現は企業にとっても社員にとっても大切なことです。企業ごとにどのような点を改善することができるのか、ぜひ見直してみましょう。