働き方改革の一環として政府が提唱するテレワーク。オフィスに出社せず、自宅など好きな場所で仕事をするという働き方なので、働く側のメリットは多そうです。ところが現実を見ると、思ったほど広がりが見られません。どうしてテレワークは定着しないのでしょうか。定着させるためには、何をどうしたらよいのでしょうか。この記事で解説します。
現在のテレワークの普及率
まず、日本でのテレワーク普及率はどの程度なのかを見ていきましょう。2020年の春、新型コロナウイルスの流行で緊急事態宣言が発令され、人と接触しないテレワークの導入が広く呼びかけられましたが、その状況も合わせて紹介します。
調査を実施した会社によると、緊急事態宣言前、テレワークに携わる正社員の割合は、13.2%でした。それが、東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が発令された4月7日以降は27.9%となり、2倍強の伸びとなっています。
実はこれは全国平均の数値です。緊急事態宣言を受けた東京都では、約半数に当たる49.1%もの人がテレワークを実施していると回答しました。東京都の3月の数値と比べても、2倍以上の伸びを示しています。神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府など他府県でも同じような傾向が見られました。
とはいえ、緊急事態宣言時、政府は「人の数を7割減らす」と要請しています。その数値と照らし合わせると、テレワークの実施率も、まだまだといったところでしょうか。
さらに、緊急事態宣言が解除された5月末のテレワーク実施率は、27.9%から25.7%に。6月に入ってからは、もっと下がっています。「できるならテレワークをしたい」という希望者は多いのに、定着には至らない現状が垣間見えます。
テレワークがなかなか定着しない理由
ではなぜテレワーウは定着しないのでしょうか。理由はさまざまに考えられますが、主な理由として次のようなことが挙げられます。
従業員の管理やコミュニケーションをとるのが難しいから
オフィスに出社すれば出退勤の記録が取れますし、休憩時間も明確です。しかしテレワークでは、そういった労務管理が難しくなります。仕事の開始時間と終了時間を自己申告してもらっても、確認のしようがありません。休憩や休日のとり方も把握しにくくなり、従業員の管理が難しくなるというのが実情です。
もうひとつ、コミュニケーションの取りにくさも課題になります。
オフィスに出社すれば、たとえ会話を交わさなくても相手の顔を見ながら仕事をすることができますが、テレワークとなると、そうはいきません。もちろん、ビデオ通話などでのコミュニケーションは可能ですが、やはり常に顔を合わせていたほうが、わかり合える部分があるのではないでしょうか。結果、仲間意識や協調性が芽生えにくくなり、仕事に支障が出ることも懸念事項のひとつです。
テレワークに意欲的でないから
日本社会には、帰属意識を大事にし、和をもって物事を成し遂げるという精神が古くから根付いています。どちらかというと、集団主義、組織主義の社会です。そういった風土の中で会社も成長してきたわけですから、経営陣が古い観念を持っていると、テレワークの導入に対して意欲的ではないかもしれません。
また、会社のシステム自体がテレワークに対応していない場合、「事業への貢献度をどのように判断したらよいのか」など、未知のことに対する抵抗感もあるでしょう。
これは働く側にとっても同じです。「仕事の頑張りを、どこでどのように見てもらえるのか」という不安の声も多く聞かれます。
テレワークに対応できる仕事が少ない
テレワークが導入できるかどうかは、業種や職種によって大きな差があります。
パソコン一台あればOKという仕事であればテレワークは十分に可能ですが、製造業や飲食のサービス業などは、テレワークを導入すること自体に無理があるといってよいでしょう。
参考:経理担当者もテレワーク業務が可能? どんな課題がある?
従業員にテレワークをする環境がない
自宅で仕事ができることは働く側にとってはメリットがありそうですが、実は「自宅では仕事ができない」という人がいることも確かです。仕事部屋が確保できないこともあるでしょうし、子どもが小さくて落ち着かないこともあるでしょう。
通信環境が整っていないことも考えられますし、家族に「家に仕事を持ち込むな」と言われているという事情もあるかもしれません。「テレワークはしたい、でもできない」という実情も、テレワークの定着を妨げる要因といえます。
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テレワークを定着させる方法
これから先、優秀な人材を確保して企業が生き残っていくためには、フレキシブルな働き方ができるようにしておきたいところです。そこで、テレワークを定着させる方法をご提案します。
評価制度を見直す
これまでの評価制度を見直し、テレワークであっても公正な評価ができる制度に改定していくことが、ひとつです。評価方法がはっきりしていれば従業員にも不安はありませんし、経営陣も悩まずにすみます。
どのように評価するかは業種によりけりですが、例えば、「成果主義」にすることも方法のひとつです。
必要経費などの社内制度の見直しを行う
テレワークに必要なものを自宅に設置した場合、支払いは誰がするのか、テレワーク中にケガをした場合は労災になるのかなど、必要経費の考え方、社内制度も見直してみましょう。
多くの企業の制度は、オフィスに出勤することが前提になっているのではないでしょうか。その枠を取り払い、テレワークにも対応させれば従業員は安心して働けますし、費用の請求等でトラブルになることも防げます。
テレワークに関連するツールの導入
ビデオ通話、会議システムなど、テレワークに関連するツールは、積極的に導入し、使いこなしていきましょう。経営側がそのような姿勢を見せれば、従業員もついてきてくれるはずです。
新型コロナウイルスの緊急事態宣言を発端として取り組む人が増えたテレワーク。テレワークが働き方改革の一環でもあることを踏まえると、一時的なもので終わらせるのではなく、定着させていきたいところです。定着しない理由を見定め、変更・改善できるところは積極的にしていきましょう。そのときには、ぜひ上記の内容を参考にしてください。